書評王の島

池袋コミュニティ・カレッジで開講中の「書評の愉悦ブックレビュー」で王に選ばれた書評を紹介するブログです。

2022年書評王

ユーディット・シャランスキー『奇妙な孤島の物語――私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう55の島(増補改訂版)』

〈文学の棚なのか、紀行エッセイの棚なのか、地図の棚なのか、書店が置き場に悩むような本である〉――訳者あとがきの冒頭にある一文は、本書を手に取った読者の戸惑いを見事に言語化している。視界に飛び込む鮮やかなライトブルーの表紙に惹かれて手に取れば…

『ゾリー』レアード・ハント著

静かな声で雄弁に語るレアード・ハントの到達点 『ゾリー』“Zorrie”Laird Hunt Bloomsbury Publishing 柴田元幸は多くの現代アメリカ文学を翻訳、紹介してきた。ポール・オースター、スティーヴン・ミルハウザー、スティーヴ・エリクソンなど、大作家から「…

【作家紹介シリーズ】ピエール・ルメートル

仏作家ピエール・ルメートルの現時点での邦訳単行本最新刊(※1)『僕が死んだあの森』の訳者あとがきを読んで驚いた。なんと彼は、2021年5月にフランスで発表した長編(※)が〈自身にとって「最後のミステリー」となる〉と宣言しているというのだ。 ルメート…

【作家紹介シリーズ】リュドミラ・ウリツカヤ

現代ロシアを代表する女性作家、リュドミラ・ウリツカヤの『緑の天幕』が刊行された。分厚い大長篇に二の足を踏むあなたに、ウリツカヤ三段階攻略法を伝授しよう。 ノーベル文学賞候補とも目されるウリツカヤの小説は、奇をてらったものではない。市井の人を…

『やさしい猫』中島京子著

「きみに、話してあげたいことがある」と始まる物語だ。語り手のマヤは女子高校生。「ちゃんと順を追っていかないと、きみの頭がこんがらがってしまう」から、「クマさんとミユキさんが出会うところから」話を始めてくれるという。 マヤの母・ミユキさんは夫…