書評王の島

トヨザキ社長こと豊崎由美さんが講師をつとめる書評講座で、書評王に選ばれた原稿を紹介するブログです。

2017-01-01から1年間の記事一覧

パトリシア・ハイスミス『見知らぬ乗客』書評

書いた人:山口裕之 2017年11月書評王講座では学生時代からのあだ名の「ルー」で呼んでもらってます。冬はNBAとNFLのテレビ観戦で忙しいです。今年はNYニックスの調子がよくてご機嫌。NYジャイアンツ、お前はダメだ。 〈そこでわたしは一夜にして"…

陳浩基『13・67』書評

書いた人:田仲真記子 2017年11月度ゲスト賞2017年8月から書評講座生。いまいちばん楽しみなのは12月の閻連科の来日。 未知の作家の作品が当たりだった時の高揚感は何物にも代えがたい。ここ数年、中国語圏にかかわる小説とはそんなうれしい出会いが…

ジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』池央耿訳

書いた人:和田M 2017年10月書評王最近読んで面白かったのはサルトル『ユダヤ人』。ホーガンは『造物主の掟』もいいですよね。 あらゆる分野の科学用語で埋め尽くされたハードSF、ジェイムズ・P・ホーガンの処女作『星を継ぐもの』を、まごうかたなき傑作“…

テジュ・コール『オープン・シティ』小磯洋光訳

書いた人:長瀬海(ながせ・かい)2017年9月書評王ライター・書評家(これまでの仕事リスト → http://nagasekai.tumblr.com)。ツイッターID: @LongSea メールアドレス:nagase0902アットマークgmail.com ナイジェリア系アメリカ移民作家テジュ・コールの『…

川崎徹『あなたが子供だった頃、わたしはもう大人だった』

書いた人:豊崎由美(とよざきゆみ)2017年8月書評王1961年生まれのライター・書評家。最新刊は大森望との共著『村上春樹「騎士団長殺し」メッタ斬り!』(河出書房新社)。 〈自分が十歳小学四年生で、嬉々として橋から列車目がけて石を投じる子供じみた悪…

宮内悠介『あとは野となれ大和撫子』(KADOKAWA)

書いた人:和田M 2017年7月書評王最近読んで面白かったのはデイヴィッド・ロッジ『恋愛療法』。 宮内悠介が飛ばしている。第1回創元SF短編賞を機縁に2011年にデビューした宮内は、応募と落選を繰り返したそれまでの十年間の鬱憤を晴らすかのように、現代性…

松浦理英子『最愛の子ども』

書いた人:豊崎由美(とよざきゆみ)2017年6月書評王1961年生まれのライター・書評家。最新刊は大森望との共著『村上春樹「騎士団長殺し」メッタ斬り!』(河出書房新社)。 「とにかくわたしたちは、日夏と真汐をわたしたちの世界での空穂の親と認定した。…

リービ英雄『模範郷』

書いた人:白石秀太(しらいし しゅうた) 2017年3月トヨザキ社長賞同志社大学文学部美学芸術学科卒。会社員 「『there』のないカリフォルニア」というエッセイでリービ英雄は、カリフォルニアにいた約二年間の〈衝撃的〉な生活を振り返っている。たしかに快…

マイケル・オンダーチェ『ビリー・ザ・キッド全仕事』福間健二訳

書いた人:悠木みつば(ゆうき みつば)2017年5月トヨザキ社長賞〆切を過ぎたあとに提出した書評王でもなんでもない書評1986年名古屋市生まれ 一般市民一時間に一行くらいのペースで文章を書くことができたり、できなかったりします。ブログ、あります。http…

『百年の散歩』多和田葉子(新潮社)

書いた人:鈴木隆詩 2017年5月書評王フリーライター 〈自分は孤独だと認めてしまうのは気持ちがいい。春だからこそできること。孤独だなんて最悪の敗北宣言ではあるけれど。友達が見つからなかった、恋人が見つからなかった、家族が作れなかった、仕事がない…

フリオ・リャマサーレス『黄色い雨』木村榮一訳

書いた人:小平智史 2017年4月 ゲスト栗原裕一郎賞1985年生まれ。仕事では英会話の本を作ったりしています。 二〇〇五年に刊行されたスペインの作家フリオ・リャマサーレスの『黄色い雨』が、短編二編を新たに加えた形で復刊された。表題作の舞台は、過疎化…

『こびとが打ち上げた小さなボール』チョ・セヒ(斎藤真理子訳)

『こびとが打ち上げた小さなボール』チョ・セヒ(斎藤真理子訳)の書評です。書いた人:豊崎由美 2017年4月書評王 1961年生まれのライター・書評家。最新刊は大森望との共著『「騎士団長殺し」メッタ斬り!』(河出書房新社)。

『模範郷』リービ英雄

書いた人:藤井勉 2017年3月書評王 会社員、共著に『村上春樹を音楽で読み解く』(日本文芸社)。「エキレビ!」でレビューを書いております。http://www.excite.co.jp/News/review/author/kawaibuchou/ リービ英雄8年ぶりの作品集となる本書は、4つの短篇…

『天使の恥部』マヌエル・プイグ(安藤哲行訳)

書いた人:白石 秀太(しらいし しゅうた)2017年2月ゲスト倉本さおり賞同志社大学文学部美学芸術学科卒。会社員 サスペンス映画の傑作とされる『裏窓』は、ヒッチコック監督ならではの技巧も光る。足を骨折中の主人公が、暇つぶしに窓から向かいのアパート…

『ブラインド・マッサージ』畢飛宇(飯塚容 訳)

書いた人:倉本さおり 2017年2月書評王 ライター、書評家。『週刊現代』『週刊SPA!』『TV Bros.』などの週刊誌や新聞各紙、『すばる』『新潮』『文藝』『文學界』などの文芸誌に寄稿。「週刊読書人」文芸時評担当(2015年)、『週刊金曜日』書評委員、『小説…

『すべての見えない光』アンソニー・ドーア(藤井 光 訳)

書いた人:森田純 2017年1月書評王1972年生まれ。海が近い山奥で暮らしています。ビール&おつまみ大好き、居酒屋大好き。 〈縦に細長く、中心には渦巻き状の貝を立てたような螺旋階段がある〉高くほっそりとした、幅の狭い6階建ての家。少女が愛した貝のよ…

『くじ』シャーリイ・ジャクスン(深町眞理子訳)

書いた人: 鈴木隆詩 2016年12月書評王フリーライター(主にアニメ音楽) シャーリイ・ジャクスンの短編「くじ」が雑誌ニューヨーカーに掲載されたのは、一九四八年のこと。その衝撃的な内容に、編集部には読者からの非難が殺到したという。 物語の舞台は、…

『寛容論』ヴォルテール(斉藤悦則訳/光文社古典新訳文庫)

書いた人:長澤敦子光文社古典新訳文庫 読書エッセイコンクール2016 優秀賞受賞作 『建て前は「寛容」に繋がるか?』 「名古屋に地震や台風の災害が少ないのは市中で熱田神宮が護ってくれてるからだってよ」会えば親しく話す隣人の言葉に思わず呵々大笑して…

『書記バートルビー/漂流船』メルヴィル(牧野有通訳/光文社古典新訳文庫)

書いた人:春名 孝 光文社古典新訳文庫 読書エッセイコンクール2016 審査員奨励賞受賞作 『バートルビーという鏡』 バートルビーとは、何だったのか。 読み終えて頭に浮かんだのは、その言葉でした。〝誰だったのか〟ではなく、〝何だったのか〟。バートルビ…

『リリース』古谷田奈月(光文社)

書いた人:八木みどり 2016年12月書評王1985年山形県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。地方紙を経て子ども向けの専門紙で記者をしています。三十路。 古谷田奈月の『リリース』は、メビウスの輪を思い起こさせる。「男女平等、同権」を目標に掲げながら、し…

『くじ』シャーリイ・ジャクスン(深町眞理子訳)

書いた人:成毛 満千(なるけ まち) 2016年12月書評王福島県生まれ10代で演劇、20代でダンスをはじめる。本好きな元キャバレーの踊り子。2016年4月、書評講座の門をたたく。 幼い頃、夏休みに田舎の祖父の家に行くのが楽しみだったんですね。牛、馬、鷄、兎…

『冬の夜ひとりの旅人が』イタロ・カルヴィーノ(訳/脇功)

書いた人: 鈴木隆詩 2016年11月ゲスト牧眞司賞フリーライター(主にアニメ音楽) 自らの体験である第二次世界大戦中のパルチザン活動を描いた長編第一作『蜘蛛の巣の小道』から始まり、作品ごとに作風を変えていったイタリアの作家イタロ・カルヴィーノ。そ…