書評王の島

池袋コミュニティ・カレッジで開講中の「書評の愉悦ブックレビュー」で王に選ばれた書評を紹介するブログです。

2018年書評王

『完訳 ロビンソン・クルーソー』ダニエル・デフォー著・増田義郎訳

子供の頃、わくわくして読んだ『ロビンソン漂流記』。今回、はじめて抄訳ではなく「完訳」を通読してみて、印象がだいぶ変わったので、意外だったところを中心に紹介したい。1.ロビンソン社長、カネと奴隷に執着 遭難するまでに70ページくらいかかる。その…

【作家紹介シリーズ】年の瀬に読みたい伊藤礼

書いた人:田仲真記子 2018年12月書評王最近ますます書評講座が心の支えです。 年末と言えば…… いまどきおせち料理を作る人も少ないようですが、年の瀬になればスーパーで正月用の食材を見かけます。この時期だけ出まわるもののひとつがクワイ。ピンポン玉大…

トンマーゾ・ランドルフィ『カフカの父親』

書いた人:藤井勉 2018年12月ゲスト賞共著『村上春樹の100曲』(立東舎)が発売中です。http://rittorsha.jp/items/17317417.html 短篇集『カフカの父親』を読んだあなたはきっと、いつもと違う年末年始を迎える。帰省して実家で過ごすあなたは思い出す。本…

近松秋江『黒髪』書評

書いた人:山口裕之 2018年10月ゲスト賞講座では学生時代からのあだ名の「ルー」で呼んでもらってます。カレーは食べるのも作るのも好きですが、どちらもルゥを使わないのが好みです。 「情痴文学」といっても『黒髪』には色っぽいことは一切書かれていない…

近松秋江『黒髪 他二篇』

書いた人:藤井勉 2018年10月社長賞共著『村上春樹の100曲』(立東舎)が発売中です。http://rittorsha.jp/items/17317417.html ここ2年近く、盛り上がりを見せている文豪ブーム。アニメ『文豪ストレイドックス』と共に、その火付け役となったのが「文アル…

町屋良平『しき』

書いた人:小林紗千子 2018年9月書評王船橋で司書をしています。電子書籍リーダーがほしい。 町屋良平の描く若者たちは、それぞれに感じやすくざわめく心と身体を持て余している。2016年に文藝賞を受賞したデビュー作『青が破れる』ではボクシング、今作では…

ジョセ・ルイス・ペイショット 『ガルヴェイアスの犬』

書いた人:田仲真記子 2018年9月社長賞大好きなタダジュンさん装画の作品で社長賞!格別にうれしいです。 1984年1月、宇宙の果てを高速で出発した「名のない物」は、標的のポルトガルの小さな村ガルヴェイアスを捕らえて大爆発し、原っぱにあいた巨大な…

ドナルド・E・ウェストレイク『さらば、シェヘラザード』

書いた人:白石 秀太(しらいし しゅうた) 2018年8月度書評王同志社大学文学部美学芸術学科卒。会社員 まず誰が何をする話かを手短にいってしまうとポルノ小説のゴーストライターがタイプライターを打っているだけの話である。では何を書いているのかという…

多和田葉子『地球にちりばめられて』書評

書いた人:田仲真記子 2018年7月書評王この夏は飯嶋和一ブームが来る予感です。 前作にあたる作者の2017年の作品『百年の散歩』に、ドイツに亡命したウイグル人ジャーナリストがミュンヘンで串焼き羊肉を売って暮らしている、という話を引き合いに出し、…

移民について考えたいあなたにおすすめしたい3冊

書いた人:長澤敦子 2018年6月書評王 ・『地球にちりばめられて』 多和田葉子 ・『マッドジャーマンズ ドイツ移民物語』 ビルギット・ヴァイエ ・『蒼氓』 石川達三 米国人の定義について考えたことがある。様々な移民を受け入れ発展してきた彼の国ではアメ…

グレアム・スウィフト『マザリング・サンデー』

書いた人:和田M 『ホライゾン・ゼロ・ドーン』(PS4)というゲームを5月だけで200時間以上やってしまいました。労災おりますか? まず、タイトルの「マザリング・サンデー」という言葉が気にかかる。母する日曜? 数ページ読み進めると〈母を訪う日曜〉とい…

ジェローム・K・ジェローム『ボートの三人男 もちろん犬も』書評

書いた人:村山弘明 2018年6月度書評王書評講座に3年1ヶ月通って初の書評王です。奇跡! ひとは自分の都合のいいように物事を解釈しがちな動物である。それは十九世紀であろうと二十一世紀であろうと変わらない。 『ボートの三人男』の舞台は、ロンドンとオ…

アキール・シャルマ『ファミリー・ライフ』

書いた人:小平智史 2018年度5月書評王最近は句会をやりたいです。 一九七〇年代の終わり頃、『ファミリー・ライフ』の主人公である八歳の少年アジェは、インドのデリーから一家で米国へ移り住む。兄は猛勉強の末、入学を希望する理科高校の試験に見事合格。…

便秘で悩み苦しむ人におすすめしたい3冊

書いた人:林亮子 2018年5月度書評王韓国のドラマ、小説、映画が好きな30代。時折「ダ・ヴィンチニュース」(https://ddnavi.com)に書評記事を書いています。Twitterアカウント:@ahirudada ・パク・ミンギュ「ヤクルトおばさん」(『カステラ』所収、ヒョ…

ケーシー高峰にお薦めしたい3作

書いた人:藤井勉 2018年4月度書評王共著で参加しています『村上春樹の100曲』(立東舎)が6月15日に発売されます。http://rittorsha.jp/items/17317417.html ■ノーマン・ロック『雪男たちの国』(柴田元幸 訳、河出書房新社)■藤枝静男「空気頭」(『田紳…

ソフィア・サマター『図書館島』書評

書いた人:鈴木隆詩 2018年3月度書評王フリーライター。アニメや漫画がメインです。以下、最近の仕事。https://bkmr.booklive.jp/complete-comic-in-1volumehttps://akiba-souken.com/article/32832/ 幽霊と旅をする物語だ。 舞台は架空の世界。オロンドリア…

アーネスト・ヘミングウェイ『移動祝祭日』書評

書いた人:白石秀太(しらいししゅうた)2018年2月度社長賞同志社大学文学部美学芸術学科卒。会社員 「敗れざる者」は大学の授業で原文を読んでから忘れられない短編だった。汗でてらつく雄牛の突進、闘牛士の間一髪の回転。すかさず上がるオーレ! 連打され…

レアード・ハント『ネバーホーム』書評

書いた人:田仲真記子 2018年2月社長賞この書評を読んで、『ネバーホーム』を手に取ってくれる人がひとりでもいたら、望外の喜びです。 米国の作家、レアード・ハントの2014年の長編。同じく柴田元幸訳の『インディアナ、インディアナ』、『優しい鬼』に…

マイクル・ビショップ『誰がスティーヴィ・クライを造ったのか?』

書いた人:鈴木隆詩 2018年1月書評王フリーライター。アニメや漫画がメインです。以下、最近の仕事。https://bkmr.booklive.jp/complete-comic-in-1volumehttps://akiba-souken.com/article/32832/ モダン・ホラー小説というジャンルに括られる作品だが、こ…

川上弘美『森へ行きましょう』書評

書いた人:松嶋文乃 2018年1月ゲスト賞元国語の教員。好きな教材は前田愛「ベルリン1888」。 『蛇を踏む』で芥川賞を受賞し、代表作『センセイの鞄』『真鶴』等で、女性の繊細な心理を半歩引いた視点で描いてきた川上弘美の新作。試しに、読み始める前にカバ…