書評王の島

トヨザキ社長こと豊崎由美さんが講師をつとめる書評講座で、書評王に選ばれた原稿を紹介するブログです。

ゲスト賞

『われら闇より天を見る』クリス・ウィタカ―著 鈴木恵訳

お馴染み、読楽亭評之輔でございます。 え~〈子は鎹(かすがい)〉なぞと申します。鎹ってのはDIYが趣味の方はご存じでしょうが、木材と木材を繋ぎとめるのに使う、コの字型の釘でございますな。 古典落語の演目「子は鎹」は、腕はいいが酒癖の悪い大工の熊…

『息吹』テッド・チャン著/大森 望 訳

わたくし読楽亭評之輔(どくらくていひょうのすけ)と申します。どうぞお見知りおきを願います。 え~、ありがたいことにわたくしもお客様から「待ってました」なんてお声をいただくことがあるんですが、いやいや「待ってました」たぁ、こういうことだ!って…

トンマーゾ・ランドルフィ『カフカの父親』

書いた人:藤井勉 2018年12月ゲスト賞共著『村上春樹の100曲』(立東舎)が発売中です。http://rittorsha.jp/items/17317417.html 短篇集『カフカの父親』を読んだあなたはきっと、いつもと違う年末年始を迎える。帰省して実家で過ごすあなたは思い出す。本…

近松秋江『黒髪』書評

書いた人:山口裕之 2018年10月ゲスト賞講座では学生時代からのあだ名の「ルー」で呼んでもらってます。カレーは食べるのも作るのも好きですが、どちらもルゥを使わないのが好みです。 「情痴文学」といっても『黒髪』には色っぽいことは一切書かれていない…

川上弘美『森へ行きましょう』書評

書いた人:松嶋文乃 2018年1月ゲスト賞元国語の教員。好きな教材は前田愛「ベルリン1888」。 『蛇を踏む』で芥川賞を受賞し、代表作『センセイの鞄』『真鶴』等で、女性の繊細な心理を半歩引いた視点で描いてきた川上弘美の新作。試しに、読み始める前にカバ…

柞刈湯葉『横浜駅SF』

書いた人:たの 2017年12月度ゲスト賞ジャム作りが趣味で講座ではジャムおじさんとして過ごしています。最近はボードゲームにはまって、ボドゲおじさんです。 設定勝ちだ。 本著のぶっとんだ設定に思わずニヤりとしてしまうに違いない。横浜駅は永遠に自己増…

陳浩基『13・67』書評

書いた人:田仲真記子 2017年11月度ゲスト賞2017年8月から書評講座生。いまいちばん楽しみなのは12月の閻連科の来日。 未知の作家の作品が当たりだった時の高揚感は何物にも代えがたい。ここ数年、中国語圏にかかわる小説とはそんなうれしい出会いが…

フリオ・リャマサーレス『黄色い雨』木村榮一訳

書いた人:小平智史 2017年4月 ゲスト栗原裕一郎賞1985年生まれ。仕事では英会話の本を作ったりしています。 二〇〇五年に刊行されたスペインの作家フリオ・リャマサーレスの『黄色い雨』が、短編二編を新たに加えた形で復刊された。表題作の舞台は、過疎化…

『天使の恥部』マヌエル・プイグ(安藤哲行訳)

書いた人:白石 秀太(しらいし しゅうた)2017年2月ゲスト倉本さおり賞同志社大学文学部美学芸術学科卒。会社員 サスペンス映画の傑作とされる『裏窓』は、ヒッチコック監督ならではの技巧も光る。足を骨折中の主人公が、暇つぶしに窓から向かいのアパート…

『冬の夜ひとりの旅人が』イタロ・カルヴィーノ(訳/脇功)

書いた人: 鈴木隆詩 2016年11月ゲスト牧眞司賞フリーライター(主にアニメ音楽) 自らの体験である第二次世界大戦中のパルチザン活動を描いた長編第一作『蜘蛛の巣の小道』から始まり、作品ごとに作風を変えていったイタリアの作家イタロ・カルヴィーノ。そ…