書評王の島

トヨザキ社長こと豊崎由美さんが講師をつとめる書評講座で、書評王に選ばれた原稿を紹介するブログです。

トヨザキ社長賞

『アムラス』トーマス・ベルンハルト著 初見基・飯島雄太郎 訳

(嵐か鳥の羽ばたく音か重い扉の音。灯りに男1が浮かび上がる。同じ背格好の男2を背負っている) ヴァルター、聞こえるか?ヴァルター。〈わたしたち〉は幽閉された。この塔の闇の中に。さあ、此処に座って。(男2を座らせる)鎧戸を開けて見るがいい。どう…

【作家紹介シリーズ】今こそ読み返したい永沢光雄

書いた人:林亮子 2019年3月トヨザキ社長賞法律関連出版社勤務。永沢光雄ファン歴20年。折に触れては何度も読み返しています。『AV女優』は第2弾の『AV女優2――おんなのこ』もおすすめです。Kindle版もあります。 永沢光雄さんへ。2006年11月1日、酒の飲み過…

村田喜代子『エリザベスの友達』書評

書いた人:関根弥生 2019年2月社長賞2018年11月から書評講座を受講しています。→Pia-no-jaC←ファン。公務員。 村田喜代子は老女を描くのがうまい。『蟹女』や『望潮』などうっすらと漂う狂気に戦慄させられる作品も多いが、『エリザベスの友達』は少し趣が…

近松秋江『黒髪 他二篇』

書いた人:藤井勉 2018年10月社長賞共著『村上春樹の100曲』(立東舎)が発売中です。http://rittorsha.jp/items/17317417.html ここ2年近く、盛り上がりを見せている文豪ブーム。アニメ『文豪ストレイドックス』と共に、その火付け役となったのが「文アル…

ジョセ・ルイス・ペイショット 『ガルヴェイアスの犬』

書いた人:田仲真記子 2018年9月社長賞大好きなタダジュンさん装画の作品で社長賞!格別にうれしいです。 1984年1月、宇宙の果てを高速で出発した「名のない物」は、標的のポルトガルの小さな村ガルヴェイアスを捕らえて大爆発し、原っぱにあいた巨大な…

グレアム・スウィフト『マザリング・サンデー』

書いた人:和田M 『ホライゾン・ゼロ・ドーン』(PS4)というゲームを5月だけで200時間以上やってしまいました。労災おりますか? まず、タイトルの「マザリング・サンデー」という言葉が気にかかる。母する日曜? 数ページ読み進めると〈母を訪う日曜〉とい…

アーネスト・ヘミングウェイ『移動祝祭日』書評

書いた人:白石秀太(しらいししゅうた)2018年2月度社長賞同志社大学文学部美学芸術学科卒。会社員 「敗れざる者」は大学の授業で原文を読んでから忘れられない短編だった。汗でてらつく雄牛の突進、闘牛士の間一髪の回転。すかさず上がるオーレ! 連打され…

レアード・ハント『ネバーホーム』書評

書いた人:田仲真記子 2018年2月社長賞この書評を読んで、『ネバーホーム』を手に取ってくれる人がひとりでもいたら、望外の喜びです。 米国の作家、レアード・ハントの2014年の長編。同じく柴田元幸訳の『インディアナ、インディアナ』、『優しい鬼』に…

知っているけど知らないことを知りたい人が知っておくべき3冊

書いた人:和田M 2017年12月度トヨザキ社長賞折に触れて何回も読んでいる本ばかり集めました。はじめての三冊書評です。 「知る」ってなんだろう。あの人は漫画のことをよく知っている、と聞いて思い浮かぶのは、古今東西のいろんな漫画を読んでいて、作者の…

エンリーケ・ビラ=マタス『パリに終わりはこない』書評

書いた人:鈴木隆詩 2017年10月度トヨザキ社長賞フリーライター。最近はさぼってばかりいます。 〈私がデュラスの屋根裏部屋でしていたのは、基本的にヘミングウェイが『移動祝祭日』で語っているような作家生活だった。〉 これはエンリーケ・ビラ=マタスが…

リービ英雄『模範郷』

書いた人:白石秀太(しらいし しゅうた) 2017年3月トヨザキ社長賞同志社大学文学部美学芸術学科卒。会社員 「『there』のないカリフォルニア」というエッセイでリービ英雄は、カリフォルニアにいた約二年間の〈衝撃的〉な生活を振り返っている。たしかに快…

マイケル・オンダーチェ『ビリー・ザ・キッド全仕事』福間健二訳

書いた人:悠木みつば(ゆうき みつば)2017年5月トヨザキ社長賞〆切を過ぎたあとに提出した書評王でもなんでもない書評1986年名古屋市生まれ 一般市民一時間に一行くらいのペースで文章を書くことができたり、できなかったりします。ブログ、あります。http…