書評王の島

トヨザキ社長こと豊崎由美さんが講師をつとめる書評講座で、書評王に選ばれた原稿を紹介するブログです。

2026-01-01から1年間の記事一覧

『見えるか保己一』蝉谷めぐ実著

2020年に『化け物心中』で小説野性時代新人賞を受賞し鮮烈なデビューを飾って以来、『おんなの女房』(吉川英治文学新人賞受賞)、『万両役者の扇』(山田風太郎賞受賞)など歌舞伎を題材とした時代小説を発表してきた蝉谷めぐ実。長編5作目にして初めて歌舞…

『田園の憂鬱』佐藤春夫著

講師:それでは只今より女性相談支援員研修を開講いたします。本日はDV被害者への支援についてグループセッションを行い、暴力が起きる背景も含めて考察を深め、支援策を導き出していただければと思います。今回は近代日本の小説家で、詩人でもある佐藤春…

がちょうのペチューニアに賛同する人にお薦めする3冊

今年で没後45年となるロジャー・デュボワザンの『がちょうのペチューニア』*1は、拾った本を持ち歩くことで賢くなったと勘違いしたおばかさんのペチューニアが、農場の仲間を大騒動に巻き込むユーモラスな絵本。 がちょうのペチューニア 作者:ロジャー・デュ…

『名前のないカフェ』ローベルト・ゼーターラー著/浅井晶子訳

〈ウィーンで最も貧しく薄汚い地域のひとつ〉であるカルメリーター市場の脇に、古ぼけた陰気なカフェがあった。やる気のなさそうな店主がぬるいビールを出していたが、ある日ふいに失踪してしまう。店の窓に埃がかぶっていくのを見ていたのは、戦災孤児の施…

『キャンディハウス』ジェニファー・イーガン著/谷崎由依訳

〈「時間ってやつはならずものだ。そうだろ? そのならずものたちを、のさばらせておくつもりか?」〉 2011年のピュリッツァー賞(フィクション部門)や全米批評家協会賞に選出された『ならずものがやってくる』(ハヤカワepi文庫)。作者のジェニファー・イーガ…

2026年3月の日本を生きる皆様に改めておすすめする3冊

〈メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かねばならぬと決意した〉という書き出しから始まる太宰治の短編「走れメロス」を久しぶりに読み返した。ディオニス王の暴政に怒ったメロスは王に意見しようと城に乗り込んで捕まり、短剣を持っていたことか…

『第七問』リチャード・フラナガン著/渡辺佐智江訳

第二次世界大戦で大日本帝国陸軍の捕虜となったオーストラリアの軍医・ドリゴの半生を描いた『奥のほそ道』で2014年のブッカー賞を受賞したフラナガン。同作では、敷設のため数万人もの死者を出したことで悪名高い泰緬鉄道(タイとミャンマーを結ぶ鉄道)の…

時評:男女について根本から考えたい人にお薦めする3冊

就任演説で「性別は男性と女性の2つのみ」と宣言した米・トランプ大統領。LGBTだけじゃなくQとか+とか、もう複雑すぎる!みたいな雰囲気も、米国政府の新方針の後押しになっているのかもしれない。男女だけでも十分面倒なのに、だ。そこを根っこから考えた…