書評王の島

トヨザキ社長こと豊崎由美さんが講師をつとめる書評講座で、書評王に選ばれた原稿を紹介するブログです。

作家紹介シリーズ

※番外編※【作家紹介シリーズ】春日武彦

(以下の記事は、当ブログの1つ前の記事「『八月の御所グラウンド』万城目学著」執筆者である関根さんが、講師の豊崎由美さんのリクエストに応え、前月提出書評を3000字にブラッシュアップして再提出した書評です。なお、ここに登場する「捜索隊」が初登場す…

【作家紹介シリーズ】石田夏穂

デビュー作『我が友、スミス』(2021年)で第166回、2023年『我が手の太陽』で第169回芥川賞候補となった石田夏穂。1991年埼玉県生まれ、東京工業大学工学部卒。プラント建設会社の社員としての顔もある。今回、惜しくも受賞はならなかったが、私はこの作家…

【作家紹介シリーズ】 ジョン・アーヴィング

2021年11月、ジョン・アーヴィングがFacebookに投稿した。自分の最後の長篇は、2022年10月刊行になるだろう、と。1942年生まれのアーヴィングは今年80歳。『神秘大通り』から7年、15作目の長篇、”The Last Chairlift”は10月18日に…

【作家紹介シリーズ】ピエール・ルメートル

仏作家ピエール・ルメートルの現時点での邦訳単行本最新刊(※1)『僕が死んだあの森』の訳者あとがきを読んで驚いた。なんと彼は、2021年5月にフランスで発表した長編(※)が〈自身にとって「最後のミステリー」となる〉と宣言しているというのだ。 ルメート…

【作家紹介シリーズ】リュドミラ・ウリツカヤ

現代ロシアを代表する女性作家、リュドミラ・ウリツカヤの『緑の天幕』が刊行された。分厚い大長篇に二の足を踏むあなたに、ウリツカヤ三段階攻略法を伝授しよう。 ノーベル文学賞候補とも目されるウリツカヤの小説は、奇をてらったものではない。市井の人を…

【作家紹介シリーズ】高瀬隼子

隊長:それでは順に、捜索結果の報告をお願いします。今回の捜索対象は高瀬隼子作品ということで、第43回すばる文学賞受賞作の『犬のかたちをしているもの』(*1)や、第165回芥川賞候補作「水たまりで息をする」(*2)など、数こそまだ少ないものの、興味深いフ…

【作家紹介シリーズ】山口晃

「天は二物を与えず」なんぞといいますが、いえいえ、二物を与えられた人というのはやっぱりいるもので、画家の山口晃氏もそのひとりと言えましょう。 大和絵を思わせる伝統的な手法で人や建築物を緻密に描き、同じカンヴァスにお侍とサラリーマンが縦横無尽…

【作家紹介シリーズ】朝倉かすみ

それでは、乾杯の発声を仰せつかりましたので、ひと言ご挨拶申しあげます。 今を去ること12年前。エッセー集『ぜんぜんたいへんじゃないです。』で〈年女だ。次に干支がひと回りしたら、還暦というところまできた〉と書いておられた朝倉かすみさん。この度は…

【作家紹介シリーズ】内澤旬子

以前から作品を読んできた内澤旬子さんのことが気になってしかたない。それというのも最新作を読んでしまったからだ。 2007年の出世作『世界屠畜紀行』は、世界中の屠畜の現場を訪れてまとめた、自作イラスト入りの詳細なルポルタージュだった。モンゴル…

【作家紹介シリーズ】少年アヤ

日記文学、というジャンルがある。平安版・夢見るオタク少女の回想記である『更級日記』、何気ない出来事を独特の観察眼で綴った武田百合子の『富士日記』など、日々の記録から生活を覗き見しつつ追体験できるような親近感と、そこから浮かびあがる社会の空…

【作家紹介シリーズ】門井慶喜

書いた人:関根弥生 2019年5月書評王初の書評王に興奮覚めやらぬ翌週、『夢の日本の洋館』発刊記念のトークイベントに行ってきました。直に聴く門井さんの〈建築ウンチク〉は、まさに圧巻。至福のひと時でした。 ぼくらの近代建築デラックス! (文春文庫) 作…

【作家紹介シリーズ】今こそ読み返したい永沢光雄

書いた人:林亮子 2019年3月トヨザキ社長賞法律関連出版社勤務。永沢光雄ファン歴20年。折に触れては何度も読み返しています。『AV女優』は第2弾の『AV女優2――おんなのこ』もおすすめです。Kindle版もあります。 永沢光雄さんへ。2006年11月1日、酒の飲み過…