書評王の島

トヨザキ社長こと豊﨑由美さんが池袋コミュニティカレッジで開講している「書評の愉悦ブックレビュー」。そこで書評王に選ばれた書評を紹介するブログです。

町屋良平『しき』書評

書いた人:小林紗千子 2018年9月書評王船橋で司書をしています。電子書籍リーダーがほしい。 町屋良平の描く若者たちは、それぞれに感じやすくざわめく心と身体を持て余している。2016年に文藝賞を受賞したデビュー作『青が破れる』ではボクシング、今作では…

ジョセ・ルイス・ペイショット 『ガルヴェイアスの犬』書評

書いた人:田仲真記子 2018年9月社長賞大好きなタダジュンさん装画の作品で社長賞!格別にうれしいです。 1984年1月、宇宙の果てを高速で出発した「名のない物」は、標的のポルトガルの小さな村ガルヴェイアスを捕らえて大爆発し、原っぱにあいた巨大な…

ドナルド・E・ウェストレイク『さらば、シェヘラザード』書評

書いた人:白石 秀太(しらいし しゅうた) 2018年8月度書評王同志社大学文学部美学芸術学科卒。会社員 まず誰が何をする話かを手短にいってしまうとポルノ小説のゴーストライターがタイプライターを打っているだけの話である。では何を書いているのかという…

多和田葉子『地球にちりばめられて』書評

書いた人:田仲真記子 2018年7月書評王この夏は飯嶋和一ブームが来る予感です。 前作にあたる作者の2017年の作品『百年の散歩』に、ドイツに亡命したウイグル人ジャーナリストがミュンヘンで串焼き羊肉を売って暮らしている、という話を引き合いに出し、…

移民について考えたいあなたにおすすめしたい3冊

書いた人:長澤敦子 2018年6月書評王 ・『地球にちりばめられて』 多和田葉子 ・『マッドジャーマンズ ドイツ移民物語』 ビルギット・ヴァイエ ・『蒼氓』 石川達三 米国人の定義について考えたことがある。様々な移民を受け入れ発展してきた彼の国ではアメ…

グレアム・スウィフト『マザリング・サンデー』

書いた人:和田M 『ホライゾン・ゼロ・ドーン』(PS4)というゲームを5月だけで200時間以上やってしまいました。労災おりますか? まず、タイトルの「マザリング・サンデー」という言葉が気にかかる。母する日曜? 数ページ読み進めると〈母を訪う日曜〉とい…

ジェローム・K・ジェローム『ボートの三人男 もちろん犬も』書評

書いた人:村山弘明 2018年6月度書評王書評講座に3年1ヶ月通って初の書評王です。奇跡! ひとは自分の都合のいいように物事を解釈しがちな動物である。それは十九世紀であろうと二十一世紀であろうと変わらない。 『ボートの三人男』の舞台は、ロンドンとオ…

アキール・シャルマ『ファミリー・ライフ』書評

書いた人:小平智史 2018年度5月書評王最近は句会をやりたいです。 一九七〇年代の終わり頃、『ファミリー・ライフ』の主人公である八歳の少年アジェは、インドのデリーから一家で米国へ移り住む。兄は猛勉強の末、入学を希望する理科高校の試験に見事合格。…

便秘で悩み苦しむ人におすすめしたい3冊

書いた人:林亮子 2018年5月度書評王韓国のドラマ、小説、映画が好きな30代。時折「ダ・ヴィンチニュース」(https://ddnavi.com)に書評記事を書いています。Twitterアカウント:@ahirudada ・パク・ミンギュ「ヤクルトおばさん」(『カステラ』所収、ヒョ…

ケーシー高峰にお薦めしたい3作

書いた人:藤井勉 2018年4月度書評王共著で参加しています『村上春樹の100曲』(立東舎)が6月15日に発売されます。http://rittorsha.jp/items/17317417.html ■ノーマン・ロック『雪男たちの国』(柴田元幸 訳、河出書房新社)■藤枝静男「空気頭」(『田紳…

ソフィア・サマター『図書館島』書評

書いた人:鈴木隆詩 2018年3月度書評王フリーライター。アニメや漫画がメインです。以下、最近の仕事。https://bkmr.booklive.jp/complete-comic-in-1volumehttps://akiba-souken.com/article/32832/ 幽霊と旅をする物語だ。 舞台は架空の世界。オロンドリア…

アーネスト・ヘミングウェイ『移動祝祭日』書評

書いた人:白石秀太(しらいししゅうた)2018年2月度社長賞同志社大学文学部美学芸術学科卒。会社員 「敗れざる者」は大学の授業で原文を読んでから忘れられない短編だった。汗でてらつく雄牛の突進、闘牛士の間一髪の回転。すかさず上がるオーレ! 連打され…

レアード・ハント『ネバーホーム』書評

書いた人:田仲真記子 2018年2月社長賞この書評を読んで、『ネバーホーム』を手に取ってくれる人がひとりでもいたら、望外の喜びです。 米国の作家、レアード・ハントの2014年の長編。同じく柴田元幸訳の『インディアナ、インディアナ』、『優しい鬼』に…

マイクル・ビショップ『誰がスティーヴィ・クライを造ったのか?』書評

書いた人:鈴木隆詩 2018年1月書評王フリーライター。アニメや漫画がメインです。以下、最近の仕事。https://bkmr.booklive.jp/complete-comic-in-1volumehttps://akiba-souken.com/article/32832/ モダン・ホラー小説というジャンルに括られる作品だが、こ…

川上弘美『森へ行きましょう』書評

書いた人:松嶋文乃 2018年1月ゲスト賞元国語の教員。好きな教材は前田愛「ベルリン1888」。 『蛇を踏む』で芥川賞を受賞し、代表作『センセイの鞄』『真鶴』等で、女性の繊細な心理を半歩引いた視点で描いてきた川上弘美の新作。試しに、読み始める前にカバ…

知っているけど知らないことを知りたい人が知っておくべき三冊

書いた人:和田M 2017年12月度トヨザキ社長賞折に触れて何回も読んでいる本ばかり集めました。はじめての三冊書評です。 「知る」ってなんだろう。あの人は漫画のことをよく知っている、と聞いて思い浮かぶのは、古今東西のいろんな漫画を読んでいて、作者の…

柞刈湯葉『横浜駅SF』書評

書いた人:たの 2017年12月度ゲスト賞ジャム作りが趣味で講座ではジャムおじさんとして過ごしています。最近はボードゲームにはまって、ボドゲおじさんです。 設定勝ちだ。 本著のぶっとんだ設定に思わずニヤりとしてしまうに違いない。横浜駅は永遠に自己増…

エンリーケ・ビラ=マタス『パリに終わりはこない』書評

書いた人:鈴木隆詩 2017年10月度トヨザキ社長賞フリーライター。最近はさぼってばかりいます。 〈私がデュラスの屋根裏部屋でしていたのは、基本的にヘミングウェイが『移動祝祭日』で語っているような作家生活だった。〉 これはエンリーケ・ビラ=マタスが…

パトリシア・ハイスミス『見知らぬ乗客』書評

書いた人:山口裕之 2017年11月書評王講座では学生時代からのあだ名の「ルー」で呼んでもらってます。冬はNBAとNFLのテレビ観戦で忙しいです。今年はNYニックスの調子がよくてご機嫌。NYジャイアンツ、お前はダメだ。 〈そこでわたしは一夜にして"…

陳浩基『13・67』書評

書いた人:田仲真記子 2017年11月度ゲスト賞2017年8月から書評講座生。いまいちばん楽しみなのは12月の閻連科の来日。 未知の作家の作品が当たりだった時の高揚感は何物にも代えがたい。ここ数年、中国語圏にかかわる小説とはそんなうれしい出会いが…

ジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』池央耿訳

書いた人:和田M 2017年10月書評王最近読んで面白かったのはサルトル『ユダヤ人』。ホーガンは『造物主の掟』もいいですよね。 あらゆる分野の科学用語で埋め尽くされたハードSF、ジェイムズ・P・ホーガンの処女作『星を継ぐもの』を、まごうかたなき傑作“…

テジュ・コール『オープン・シティ』小磯洋光訳

書いた人:長瀬海(ながせ・かい)2017年9月書評王ライター・書評家(これまでの仕事リスト → http://nagasekai.tumblr.com)。ツイッターID: @LongSea メールアドレス:nagase0902アットマークgmail.com ナイジェリア系アメリカ移民作家テジュ・コールの『…

川崎徹『あなたが子供だった頃、わたしはもう大人だった』

書いた人:豊崎由美(とよざきゆみ)2017年8月書評王1961年生まれのライター・書評家。最新刊は大森望との共著『村上春樹「騎士団長殺し」メッタ斬り!』(河出書房新社)。 〈自分が十歳小学四年生で、嬉々として橋から列車目がけて石を投じる子供じみた悪…

宮内悠介『あとは野となれ大和撫子』(KADOKAWA)

書いた人:和田M 2017年7月書評王最近読んで面白かったのはデイヴィッド・ロッジ『恋愛療法』。 宮内悠介が飛ばしている。第1回創元SF短編賞を機縁に2011年にデビューした宮内は、応募と落選を繰り返したそれまでの十年間の鬱憤を晴らすかのように、現代性…

松浦理英子『最愛の子ども』

書いた人:豊崎由美(とよざきゆみ)2017年6月書評王1961年生まれのライター・書評家。最新刊は大森望との共著『村上春樹「騎士団長殺し」メッタ斬り!』(河出書房新社)。 「とにかくわたしたちは、日夏と真汐をわたしたちの世界での空穂の親と認定した。…

リービ英雄『模範郷』

書いた人:白石秀太(しらいし しゅうた) 2017年3月トヨザキ社長賞同志社大学文学部美学芸術学科卒。会社員 「『there』のないカリフォルニア」というエッセイでリービ英雄は、カリフォルニアにいた約二年間の〈衝撃的〉な生活を振り返っている。たしかに快…

マイケル・オンダーチェ『ビリー・ザ・キッド全仕事』福間健二訳

書いた人:悠木みつば(ゆうき みつば)2017年5月トヨザキ社長賞〆切を過ぎたあとに提出した書評王でもなんでもない書評1986年名古屋市生まれ 一般市民一時間に一行くらいのペースで文章を書くことができたり、できなかったりします。ブログ、あります。http…

『百年の散歩』多和田葉子(新潮社)

書いた人:鈴木隆詩 2017年5月書評王フリーライター 〈自分は孤独だと認めてしまうのは気持ちがいい。春だからこそできること。孤独だなんて最悪の敗北宣言ではあるけれど。友達が見つからなかった、恋人が見つからなかった、家族が作れなかった、仕事がない…

フリオ・リャマサーレス『黄色い雨』木村榮一訳

書いた人:小平智史 2017年4月 ゲスト栗原裕一郎賞1985年生まれ。仕事では英会話の本を作ったりしています。 二〇〇五年に刊行されたスペインの作家フリオ・リャマサーレスの『黄色い雨』が、短編二編を新たに加えた形で復刊された。表題作の舞台は、過疎化…

『こびとが打ち上げた小さなボール』チョ・セヒ(斎藤真理子訳)

『こびとが打ち上げた小さなボール』チョ・セヒ(斎藤真理子訳)の書評です。書いた人:豊崎由美 2017年4月書評王 1961年生まれのライター・書評家。最新刊は大森望との共著『「騎士団長殺し」メッタ斬り!』(河出書房新社)。